唯称寺本堂

昔、唯称寺が中吉原宿(依田橋の西)にあった頃、ある晩、住職の夢に白髭の翁が現れ、「私は、和田川の川下に住んでいるかっぱです。先日の洪水で河合橋の近くにある私の住みかに農具がひっかかり困っています。どうぞ農具を取ってください」 と頼んできた。
 翌朝、住職は河合橋まで行ってみると、かっぱの言ったとおり、和田川の土手の下の方に農具がひっかかっていたので、これを取り除いた。
 その晩、夢の中にかっぱが現れ、御礼を述べて 「これは、私が川底で拾った茶つぼです。ほんのお礼のしるしです。そして、これからは唯称寺が火難や水難に遭わないよう、私がお守りいたしましょう」 と言った。
 朝になって住職が玄関に出てみると、茶つぼと魚が置いてあった。この後、唯称寺は一度も火事に遭ったことはないという。

富士市民話より

唯称寺寺標

無縁供養塔