「扇屋伝承文化館」 は、かつて 「扇屋」 と呼ばれ、櫛や扇などを販売していた商家を私ども北東区自治会が譲り受け、地域文化の伝承発信の場とするとともに、旧東海道を散策する人たちの憩いの場とするべく改修し、平成22年い開館しました。
さて、この地域は、江戸時代49番目の宿場町として栄えた「土山宿」の東に位置し、古くは 「生野(幾野)」 と呼ばれました。
「田村川うちわたり幾野につかれやすめて・・・」 (「旅の命毛」1807三枝斐子) とあるように難所の鈴鹿峠を越えてきた旅人たちが、京の都を目の前にしてホッと一休み、旅の疲れを癒したのがこの宿場でした。
この 「生野」 の宿場の賑わいは、太田南畝が享和元年(1801)東海道を江戸から大阪へ下った時に記した旅行記 「改元紀行」 のなかからもうかがい知ることができます。
「土山の宿に入りても櫛売る家多し。土山亀井櫛又御櫛所お六櫛など書きたる札を出せり。此の所蕎麦名物なり」
信州信濃から伝わった 「お六櫛」、東海道二番に美味しいと言われた 「夕霧蕎麦」 さらに古くから伝わる 「蟹ヶ坂飴」 など数々の名産、名品を商う茶店や土産物屋が軒を連ねていたことでしょう。
当館では、これらの名産・名品を紹介しておりますので是非ご覧ください。
私ども地域住民の手作りによる「伝承文化館」ではございますが、往時の東海道 「土山宿」 の賑わいに思いを馳せ、ひとときの癒しとしていただければ幸いです。
田村川に橋あり。右のかたに橋番所あり。橋を渡りて左にゆく。杉たてる中をゆくに、田村明神の大門也。土山の宿にいりても櫛うる家多し。土山亀井ぐし、又御櫛所お六櫛など、かきたる札だせり。此処のところの蕎麦名物也。
扇屋伝承文化館内部
本家御櫛所 扇屋長蔵 看板
案内書
太田南畝の改元紀行より
扇屋伝承文化館入口