渋谷神社は、江戸時代に神寿稲荷(稲荷社)と称し、旧門沢橋村の鎮守であった。現在の渋谷神社に名称を改めたのは、明治7年である。江戸時代の延宝7年(1679)鋳造の鐘を鐘楼にかけていたので、その成立は同時代初期に遡ると思われる。勧請の年代は不詳であるが、古社であることは間違いないと思われる。
本殿は、間口四尺の一間社流造りの建物で、覆殿内部に安置されている。建築年代は、本殿内にある棟札から、寛保元年(1741)と推定される。また同じ棟札から、作者が地元の工匠であることが判明している。
母屋は、正面両脇の小壁に上り龍や下り龍の彫物をはめ、頭貫の木鼻は、正面を獅子と獏の彫物、背面は象鼻と絵様木鼻である。また中備には、草花を彫った蟇股を置くなど、小規模な建物ながら、彫物装飾を効果的に用いた造りとなっている。当本殿は、斗栱の形式、虹梁の絵様や、木部と彫物すべてに当初から彩色が施されている点など、18世紀の中ごろの特長をよく示しているうえ、保存状態も良い。また、当時としては彫刻を多く用いるのは珍しい。
以上のように、本物件は、18世紀前期の標準的な遺構として貴重であり、保護の価値があると認められるため、市指定重要文化財に指定したものである。
(海老名市教育委員会)
宝物殿の扁額が掛かる神輿庫
鐘楼
渋谷神社の扁額が掛かる石鳥居
手水舎
渋谷神社説明
境内社の神明鳥居
神明社系の石祠
地蔵堂
渋谷神社拝殿
渋谷神社本殿覆屋