歴史が漂うこの淵は、巴状にうずまき、巴が淵と名付けられた。
 伝説には、この淵に龍神が住み、化身して権の守中原兼遠の娘として生まれ、名を巴御前と云った。義仲と戦場にはせた麗将巴御前の武勇は、痛ましくも切々と燃えた愛の証でもあった。巴御前の尊霊は再びこの淵に帰住したと云う。法号を龍神院殿と称えられ、義仲の菩提所徳音寺に墓が苔むして並ぶ。
 絶世の美女巴は、ここで水浴をし、また泳いでは武技を錬ったと云う。そのつややかな黒髪のしたたりと乙女の白い肌元には、義仲への恋慕の情がひたに燃えていた。
 岩をかみ蒼くうずまく巴が淵、四季の風情が魅する巴が淵、木曽川の悠久の流れと共に、この巴が淵の余情はみつみつとして、今も世の人の胸にひびき伝わる。
  蒼蒼と巴が淵は岩をかみ黒髪愛しほととぎす啼く
 (木曽町)

伝説の残る巴が淵

巴淵

巴橋袂のモミジ

今が見頃のモミジ

巴淵の鏡のような水面

沢田正春の「木曽路」の一文